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未来小説:ブラックアウト
ブラック企業の終焉..2024年労働者勝利の年
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*エピローグ

関西では悪名高いブラック企業…

大阪城

大阪城、淀川にある刑務所、そして同社…
黒いカラスがトレードマークの看板のある
「株式会社加羅墨(カラス)」の社長室..

大賀社長(カラスの社章を背広につけている)
「おい、高見専務、一体どうしたんだ。この仕事
は誰がするんだ。求人広告出しても一人も応募
募がないのはどうしたわけだ?」

高見専務
「すみません。そうなんです。全く応募がないん
 です。もう5回目の求人広告を出したんですが。」
「もちろん、ハローワークの申込みもしています。」
「人材紹介会社、派遣会社などすべての求人サイト
 にも登録済みなんですが。最近、さっぱりです。
 問合せすらない状態です。」

大賀社長
「すみません、で済むことじゃないだろう。この
 ままなら、次の仕事を受注できないじゃないか。
 何とかしろよ。外国人の留学生でも構わないし、
 75歳の後期高齢者でも構わないし、障害者で
 もできる仕事じゃないか。最悪、派遣社員でも
  いいんだろう。一人も確保できないなんでどう
  いうことだ。」

「当社の近くにある刑務所を出たばかりの人間も
  いるだろう。保護観察処分を受けている前科者
  だって構わないんだ。何とかしろ。」

高見専務
「ダメなんです。例のユニオンネットワークのせ
 いです。社長もご存知でしょう。全国ブラック
 企業撃退組合、National Black-out Union
  NBUですよ。日本にある554万社全てのデ
 ―タを無料で公表している組合です。スマホで
  無料でアクセスできて、そのブラック度合いの
  ランキングを公表している組合です。独自に情
  報を集めてブラック企業の全情報を開示してい
  る組合です。今や就職活動をしている新卒者、
  第二新卒者、中途採用応募者の間では、このサ
  イトで応募見込み企業の内容を確認してから応
  募するのが常識となっています。デジタル、IT
  に弱い求職者用に民間版ハローワークのような
  口頭や電話で相談できる窓口もすべて無料で、
  今やコンビ二と同じくらいの数が全国にあるそう
  です。ですから、中高年や高齢者でも簡単に利用
  できますから。労働者向けの無料アプリも全国
  に配布しています。有料ですが、格安でそのア
  プリの入力代行もしているそうです。

  当社はそのランキングでは全国でも最低ランク
  5,539,999番目です。従って、誰も当社に応募
  してくれるはずがありません。どんなに悪くて
  も4,500,000以内にランクされていないと無理
  なんですよ。実際、ハローワークから民間の派
  遣会社、人材紹介会社、人材銀行、刑務所、在
  留外国人までほぼ全てをおさえている組合です。
  しかも、今は台湾やタイなど外国までその勢力
  を広げている大手です。当社ではとても太刀打
  ちできません。

  そのNBUの組合員は現代版チェ・ゲバラ氏を
  象徴する帽子キャップのマークのついたバッジ
  をつけているそうです。労働者革命を目指して
  いる改革者、その全員が革命家と自負している
  そうで士気も高いと聞いています。人手不足で
  倒産させた会社に対しても、それが原因で失業
  した従業員も全員再雇用しているそうです。と
  ても当社のレベルでは、対抗できそうもありま
  せん。」

大賀社長
「…」
「じゃー、どうしたらいいんだ。やはりそのNBU
  からの派遣社員を受け入れるしかないのか。」

高見専務
「そうです。しかし、当社のようなブラック企業の
 場合は割高の人材しか派遣してくれません。それ
 に監視カメラとか従業員の身体につけるGPU付き
  仕事監視時間センサーなどの追加の設備・ツール
  も最低条件で投資しないと申込みすらできないで
  すが。労働契約書の作成、社内規程の作成、組合
  の結成許可も必要になりますが、それでもいいん
  ですね。」

大賀社長
「…..」
「……….」
「…………….」

「仕方ないな。当社の社員の平均年齢はもう65歳
 だし、これ以上は待てない。若い人材を入れるこ
 とにしよう。このままでは人材不足で倒産するし
 かないからな。」

高見専務
「そうです。実際、4,500,000以下のランクの会社
 の倒産率は2年以内95%以上とのデータもある
 と聞いています。また、NBUの調査は内部告発
 など含めて徹底的に調査した上でしか、このデー
  タを公表をしていないので、法廷闘争に持ち込ま
  れた場合でのNBUの勝率は99%だそうです。

  独自に労働監視Gメンまで養成しているとのこと
  で、内偵企業には組合員が潜入捜査をしていると
  の噂もあります。その実態は公表されていません
  が。NBUの創始者は、日本にある全てのブラック
  企業を7年以内に人手不足倒産させることを目標
  しているそうです。既に全国で1万社以上が実際
  に倒産させられたということです。」

「トン、トン、トン」
「ドン、ドン、ドン、ドン、ドン!」
(社長室のドアを激しくたたく大きな音)
「カチャ、ギー」(ドアを開ける音)

大賀社長
「どうした、林悟(りんご)課長。今、大事な会議を
  しているから、後にしてくれないか。」

林悟(りんご)総務課長
「それが…そういうわけにはいかないんですよ。」

高見専務
「どういうことだ、何があったんだ!」

林悟(りんご)総務課長
「労働基準監督署と入国管理局の強制捜査ですよ。
  今、警察も含め20名以上の人達が来ています。
  捜索令状を見せられました。入国管理法違反と
  労働基準法違反の疑いでの強制捜査だそうです。
  当社の別会社で勤務中の外国人留学生の長時間
  違法就労の調査と、最近退職した5名に関しての
  労働基準法違反による告発だということです。
  それに…」

高見専務
「それに、何だ!」

林悟(りんご)総務課長
「会社の外では、NBUのデモ隊が来ています。
 NBUの地区代表も社長との面会を求めていま
 す。今日は仕事ができる状態ではありません。
 それから…」

大賀社長
「それから、一体、何だ!」


林悟(りんご)総務課長
「これは辞表です。本日で退職させていただきます。
 今まで何回も忠告させていただきましたが、全く
  私の改善案は取り上げてもらえませんでした。こ
  のままでは、私は警察に逮捕されます。元社員か
  からの訴訟も10件以上も個人的にされる可能性
  もあります。既に、NBUの幹部とも相談しまし
  たが。これ以上、会社に留まることはできません。
  長い間お世話になりました。失礼します。」

「ギー..バターン!」
(激しく、社長室のドアを開ける音)

「コツ、コツ、コツ….」
(そのドアを閉めようともせず、立ち去る課長の足音)

大賀社長
「…..」「……..」「………..」
高見専務
「…..」「……..」「………..」


ナレーション
「元社員からの多数の訴訟と、当局からの捜査
 の影響で同社は1年も持たずに倒産しました。
 そして、2024年12月、NBUは宣言しま
 した。本年を労働者勝利の年とし、90%以上
  のブラック企業が淘汰された記念すべき日の
  到来です。そして、NBUの組合史にこれが、
  記録されました。」

..某課長は、カラスマークの社章バッジを捨て、
  着ていた背広に、チェ・ゲバラキャップマーク
  入りのバッジを付け直してその会社を後にしま
 した。

 FINE